音楽を比較や勝ち負けのためにやらないこと

 健太です。

 音楽をやる動機は人それぞれだと思いますが、他人との比較や勝ち負けを目的にするのは勧められません。


 誰でも音楽を始めた当初は、ただ単に音楽が楽しい、好きだという純粋な気持ちを持っていたと思います。しかしそのうち他人と自分の技術を比較するようになります。


 比較は不幸の始まりです。比較する心は人間としてとても自然なものなのですが、比較が幸せを生むことはありません。「比較して勝っていれば幸せになれるのではないか?」と言う人もいるでしょう。確かに勝てばいい気分になります。


 しかしその発想では、自分より上が現れたとき、自分を惨めな敗残者として規定せざるを得ず、なまじ勝ったときの気分を知っているため、余計に自分を貶める羽目(はめ)になります。「それなら勝ち続ければいいのでは?」と言う人もいるかもしませんが、その考えを持つともう常に負ける恐怖につきまとわれることになり、もはや音楽の楽しさを味わうことなどできないでしょう。勝ち負けのためにする音楽ほどつらいものはありません。


 比較するなら、その相手は他人ではなく過去の自分にしましょう。自分はまだ下手だが、一年前より、半年前よりはうまくなった、そう思えばまた楽しくできるというものです。


 もっとも、負けて悔しいから頑張れるという面もありますので、勝ち負けが一概に悪いとは言えません。またコンクールやオーディションを否定するものでもありません。私もあえて「負けていられませんね」と言って生徒さんに発破を掛けることはあります。ただそれは方便に過ぎません。勝ち負けという発想には限界があることを知っていてもらいたいと思います。


 楽しめてこそ音楽、好きでいられてこその音楽です。他人を打ち負かす武器にせず、最初の気持ちにいつでも立ち返れるようにしましょう。