上達の鍵〈方法論篇〉

 健太です。

 今日は声楽の上達のために必要な要素を、特に方法論の面で書いていこうと思います。

 その要素とは、「情報を遮断」する力と「試行錯誤」する力と「取捨選択」する力の三つです。この三つは重なるところも多いのですが、言い換えると、「むやみに情報を集めず、身近にある練習方法を試して自分に合うものを選び、合わないものは捨てる」能力です。この能力があれば上達は速いと思います。

 今の時代は情報が氾濫しています。書店に行けば、歌が上手くなる秘訣が書かれた本がたくさん売られていますし、見たことはありませんがインターネットにもそういうサイトはたくさんあると思います。

 しかし歌は体でやることです。体で覚えることです。知識や理論をたくさん知ったところで歌は歌えません。頭でっかちではいけません。実は私自身が知識や理論先行型の人間で、そのせいで体で覚えることを学ぶ際には多くの失敗をしてきました。経験者が言うのですから間違いありません。あるタイの高僧も、「学歴の高い人の修行は知識が邪魔をしてなかなか進まない。学歴の低い人の修行はすぐ進む」という内容のことを言っています。高学歴の人は色々知っているので「師匠はこう言うが本にはこう書いてあった。どっちが正しいのだろう?」と、どうしても不必要な迷いに苦しめられます。ですから、特に初心者の方は「活字」からハウツーを学ぶのはやめましょう。

 まずは師匠から教わった練習方法を試しましょう。最低数か月は熱心に取り組んでみましょう。その結果、「この方法は合うが、もう一つの方法はどうも合わない気がする」というような感想を抱くかもしれません。その際は合う方を残し、合わない方は勇気を持って捨てましょう。ただ初心者のうちはその判断が間違う確率も高いと思いますので、師匠に相談しましょう。また、一度捨てた方法も、頭の中には残しておきましょう。今はその方法が役に立たなくても今後役立つ可能性があるからです。これも私自身が経験したことです。

 歌をやる中で出会った人から役に立ちそうな練習方法を聞くときがあります。その場合も、それを試してみて、合うなら残し、合わないなら捨てましょう。

 以上が上達の鍵〈方法論篇〉です。今度〈精神面篇〉を書こうと思います。