沈黙療法

 健太です。

 先月のクリスマスコンサートの数日前、歌を歌った後、喉の痛みと声の出にくさを感じました。痛みが割りと強かったので本番前なのにどうしようと焦ったのですが、ふと「沈黙療法」のことを思い出しました。沈黙療法とはその名の通り、傷ついた声帯を守るために一切声を出さないようにする治療法のことで、声帯の手術後などによく行われます。

 「いいことを思い出した。どんな薬より黙って休めてやる方がいいに違いない」と思い、本番三日前の日曜日、実行することにしました。

 朝8時頃に起き、家内に写真のようなメモを見せました。どういう反応をするかと思っていたのですが、すんなりと協力する旨を伝えてくれました。家内とは筆談で会話することにしました。

 初めての筆談は新鮮で、結構楽しい療法だと思いました。しかしそれも束の間で、2時間ほど経った頃でしょうか、猛烈に「話したい欲求」に駆られました。沈黙を始める前は、言いたいことが伝われば、音声を伴っている必要は無いと思っていたのですが、どうも人間には音声を発して意思や感情を伝えたいという強い本能が備わっているらしく、声を出せない状況に強烈なストレスを感じ始めました。

 結局開始3時間半辺りで、「やっぱり少しは喋ることにするわ」と家内に言って、私の沈黙療法は終わりました。話したり歌ったりできることがいかにありがたいか痛感した3時間半でした。

 ちなみに翌日耳鼻科で診てもらったところ、「声帯はきれいですよ。どんどん使ってください」と医師に言われました。私が一人で騒いだだけでした。